オーナー所有の株式を従業員持株会に譲渡することで期待できる効果は、「オーナーの相続財産の減
少」・「安定株主の確保と社外流出防止」・「従業員の福利厚生」の三つに大別されます。
1.オーナーの相続財産の減少
福利厚生を目的に従業員が自社株を取得し保有する制度が、従業員持株会制度です。非上場会社が
この制度を導入する大きな理由の一つが、オーナーの相続対策です。
オーナーの所有する自社株は、原則的評価方式によって高く評価され、相続税が高くなる可能性が
ありますが、従業員持株会を設立して自社株を譲渡すれば、オーナーの持株数は減少し、オーナーの
相続財産も減少します。
2.安定株主の確保と社外流出防止
会社にとって、一般的に従業員は安定株主として期待できるといえますので、従業員持株会には安
定株主の確保という利点があります。さらに、従業員持株会の規約において、従業員が退職するに当
たってはその従業員の保有する自社株を買取る旨を規定できることから、自社株の社外流出を防げま
す。
3.従業員の福利厚生
従業員持株会に期待できる効果の一つとして、従業員のモチベーションの上昇が挙げられます。従
業員自身の頑張りで会社の業績が伸びれば、配当金という形で、自分に見返りがあるからです。従業
員持株会は、このように福利厚生としての一面を有しているといえます。
しかしながら、株主が増加することで会社の経営に支障をきたす恐れがあるという面も否定できま
せん。ゆえに、経営に影響が出るのを防ぐため、オーナーが従業員持株会に譲渡する自社株を「配当
優先・無議決権株式」にするといった対策を取るといいと考えられます。
4.従業員持株会の設立のポイント
非上場会社は、従業員持株会を自由に設立することができますが、実際の運営は従業員持株会の規
約により行われることとなります。次のような点については、その規約で規定しておくべきです。
・従業員持株会は、民法上の組合形態として、従業員が直接の株主にならないようにする。
・株主総会での議決権の行使は、理事長に一任するものとする。
・従業員持株会からの株式の引き出しはできないものとする。
・従業員の退職時の買取り価格や算定方法を明確にする。